父との最後の会話

 独り言。来週末、大阪の実家で父の3回忌法要です。早いなあ。最後に言葉を交わした日の朝のことを今でも思い出す。
 いつもなら実家のリビングで「また来るわ」「気いつけてな」と言って別れるのに、父はこの日、おぼつかない足で立って、玄関で待っていた。ドアを開けて、「ほなまた来るわ」と言いながら振り返る。「またな」と言ってほしいと願いながら。父はこれまで見たことのない、柔和というか、何かを悟ったような表情で、「後は任せたで」と一言。
 主治医からの余命宣告を伝えてはいなかったけど、覚悟をしていたんだなあ。生きて会うことはもうないんだろうなあと思いながら、言葉にならないままドアを閉めた。
 後日、父の会社にあいさつに行った。親しかった社員の方曰く、「君のお父さんはいつも厳しい仕事を任された。若い人を積極的に起用した。失敗しても部下のせいにせず、必ず真っ先に頭を下げに行った。だから通夜・告別式であれだけの数の若手社員が自主的に手伝っていた」。仕事人間だった父への最大の褒め言葉。